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乳がんとは

日本女性の12人に1人が発症

乳がんは、かつて欧米人に多いとされていましたが、ライフスタイルの変化などから近年日本女性にも急増してきました。今やその発症率は12人に1人と言われています。乳がんは20代から発生を認め、40代後半から50代前半でピークを迎えます。他のがんと比較すると、中高年層の若い女性が罹患(りかん)するがんであることが言えます。また、乳がんの罹患(りかん)数は増えつづけており、日本の乳がん罹患(りかん)数は7万人を超えています。自分は大丈夫と思わず、女性ならば誰もがかかる病気であることを忘れないで下さい。

罹患(りかん):病気にかかること。
年齢別乳がん罹患(りかん)数(1975年〜2011年) 年齢別乳がん罹患数グラフ
乳がん罹患(りかん)数推移(1975年〜2011年) 乳がん罹患数推移グラフ

乳がんってどんながん?

乳がんの図

乳房のなかにある乳腺は、母乳をつくる小葉と母乳を乳首まで運ぶ乳管に分かれています。これらの組織に発生する腫瘍のうち、悪性のものが乳がんです。がん細胞が小葉や乳管内にとどまっているがんを「非浸潤がん」、外に出て周囲に広がったがんを「浸潤がん」と呼びます。乳がんはゆっくり進行するがんですが、放置しておけば乳腺の外までがん細胞が増殖し、血液やリンパ管を通って全身に広がっていきます

乳がんのステージ
0期 乳管の中にがんがとどまっているものです。早期の乳がんで非浸潤がんといいます。
I期 しこりの大きさが2cm以下のもので脇の下のリンパ節には転移していないものです。
IIa期 しこりの大きさは2cm以下ですが、脇の下のリンパ節に転移があるものをいいます。または、しこりの大きさが2cm〜5cmで脇の下のリンパ節に転移がないのもこのステージです。
IIb期 しこりの大きさが2cm〜5cmで脇の下のリンパ節に転移があるものです。または、5cm以上でリンパ節に転移がないものです。
IIIa期 しこりの大きさが2cm以下でも脇の下のリンパ節に転移があり、リンパ節同士が癒着していたり、周辺の組織に固定しているものです。脇の下のリンパ節への転移はないが胸骨の内側のリンパ節が腫れています。または、しこりの大きさが5cm以上で脇の下、または胸骨の内側のリンパ節に転移が見られるものです。
IIIb期 しこりの大きさ、脇の下のリンパ節の有無にかかわらず、しこりが胸壁の内側にがっちりと固定していたり、皮膚にしこりが出たり、皮膚が崩れたり、皮膚がむくんでいるものです(炎症性乳がん)
IIIc期 しこりの大きさにかかわらず、脇の下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移のある場合のものです。あるいは胸骨の上下にあるリンパ節に転移がある場合も該当します。
IV期 骨、肺、肝臓、脳などの乳房とは違う臓器に転移しているものです。

■石灰化とは

乳がん検診をする際、「石灰化」という言葉が多く使われます。「石灰化」自体は乳がんのことではありませんが、がんによる副産物の場合があるため、検診では、乳房内の「石灰化」をさがします。

良性のもの
良性の石灰化は母乳が通る管(乳管)沿いや、母乳を作る腺葉の分泌液に生じた沈殿物によって形成されます。また、線維腺腫などによっても生じます。

乳がんと関連のあるもの
がん細胞が増殖していく過程で、産出する分泌液やがんの壊死に伴って石灰化が生じることがあり、(その場合は)唯一乳がんをとらえられる証拠となります。

石灰化を検出する装置として最も代表的なのがマンモグラフィ検査で、左右2方向の計4枚撮影が理想とされています。

「石灰化」の写真

乳がんになりやすい要因

これまでの研究で乳がんにかかりやすい人に共通する要因がわかってきました。乳がんの発生には、遺伝的要因と環境的要因があり、それらの要因をリスクファクターといいます。以下の要因にあてはまる人はよりかかりやすい状況にある、ということですので積極的に検診を受けるようにしましょう。

1 食生活に関連するリスク
  • 閉経後の肥満
  • アルコール飲料の摂取
2 生活習慣および持病と関連するリスク
  • 喫煙
  • 糖尿病
  • 乳腺濃度が高い
  • エストロゲンとプロゲスチンを併用するホルモン補充療法
  • 経口避妊薬の長期間の服用
3 妊娠・出産、授乳および月経歴に関連するリスク
  • 出産経験がない
  • 初産年齢が高い
  • 授乳経験がない
  • 初経年齢が早い
  • 閉経年齢が遅い
4 遺伝に関連するリスク
  • 家系内に乳がん患者さんがいる
  • 卵巣がんにかかった人が家系内にいる

出典:日本乳癌学会 患者さんのための乳がん診療ガイドライン(2016年版)

乳がんのできやすい場所

乳房の外側上部に多くみられます。他の部分より乳腺が多いため、約半数がここに集中しています。その次に多いのが乳房内側上部、外側下部です。
乳がんの初期に痛みはほとんどありません。かたい根のはったようなしこりが多くみられます。しかし、がんの性質によってもかたさや症状は様々ですから、決して自己判断ではなく、専門医による検査を受けましょう。もし、しこり以外にも次のような変化があった場合は、すぐに専門医の診察を受けましょう。

  • 乳頭から血性の分泌物が出ている
  • 乳頭の陥没や変形、ただれ
  • わきの下のしこりや皮膚のくぼみ

これまで、乳がんはしこりによって発見されることが多かったのですが、最近では超早期のがんを発見できるマンモグラフィ検診が推奨されています。

乳がんのできやすい場所の図

乳がん死亡数の推移

諸外国に比べ、日本の死亡率はまだ低い方とされる場合もありますが年々増加しています。
日本よりも罹患(りかん)率の高い欧米ですが、死亡率はどんどん下がっています。その背景には、欧米での乳がん検診率が70%〜80%に対し、日本は34.2%程度ということも大きな要因と考えられます。

参考:OECD Health Care Data 2008

乳がんになる人が増えているのに、検診を受ける人はまだ少ないのね
乳がん死亡数の推移グラフ
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